2012年4月21日 (土)

「イスラムを生きる人びと」

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。

今日はイスラム関係の本をご紹介します。

「イスラムを生きる人びと」

イスラム中東関係の本というと、イスラム教を宗教として解説した本がほとんどだと思うのですが、そんな中で本書は、一ジャーナリストが、イスラム教徒として生きる人々にスポットを当てて書いた本。

イスラムがどのように生活に根付いているか、人々は暮らしにどのようにイスラムを生かしながらくらしているかを、
17年間新聞記者として中東にかかわる中で、インタビューを行いまとめた渾身の作とも言える書です。

日本で宗教というと、日常の生活から切り離された、特別なものと思われがちですが、
イスラムという宗教はそうではなく、日々の暮らしに密着しているものです。
「日本人にとっては宗教とはいえない領域にまでイスラムが関わってくる」(37ページ)のとおり。

それがよく表れているのが、ここに描かれたエジプトのアズハルモスクの
イスラム学者による「ファトワ」(宗教見解)です。

 人々の悩みについて、イスラムの見地からアドバイスするのですが、
その相談の多くは夫婦関係。
 「結婚したばかりの妻と口論ばかりで、妻は離婚したいという。どうしたらいいか」
など。 まるで○○新聞の人生相談欄を読んでいるよう。

イスラムと結びつけられて考えられがちな、名誉殺人、女子割礼なども、
イスラムとは関係がない、ということにも本書で触れられています。
名誉殺人は中東だけでなく、アジア、南米、スペインでも行われているし(123ページ)
割礼もイスラム教徒だけでなくキリスト教徒の間でも、さらに中東に加え、アフリカ諸国でも行われています。

にもかかわらず、なぜそれらが、あたかもイスラムで勧めているかのように是認されてきたのか

ー著者のユニークで鋭い洞察に基づいて解説されている点がとても興味深い。

イスラムでは女性は差別されていると欧米では非難されているが、本書では必ずしもそうでないことも記されています。
「イスラムでは女性は男性から守られ、庇護される存在」(79ページ)
「夫婦の間でも女性の財産権は保証され、女性ガ実家から与えられた持参品は結婚しても彼女個人の所有となる」など。

ヨルダンの女性市長、自ら離婚を申し出た女性など、
男性の記者ながらも、多くのイスラム女性にインタビューし、
その心情を描き出している点も特筆できます。

2012年4月16日 (月)

第19回旅の文化賞の表彰式に参加しました

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。

昨日、第18回旅の文化研究フォーラムがシェラトン都ホテル東京で行われ、
第19回旅の文化賞の表彰式が行われました。

私は、今回、旅の文化研究奨励賞をいただきまして、
短いですが、スピーチさせていただきました。

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以下、スピーチの内容です。

「このたびは、このような素晴らしい賞をいただけたことを大変嬉しく光栄に思っております。

私は、これまで主に中東、イスラム圏の人々の暮らしを取材してきました
なぜ中東を取材するのか。 
みなさん中東というと、「怖い」というイメージをお持ちになる方も多いかと思います。
しかし、実際には訪れてみると、そのイメージとは違い、治安が良いし、人びとは気軽に家に呼んでくれたりと、人の心が温かいのに驚きます。
私が初めて中東を訪れたのは、会社員をやめて写真や文で生計を立てていこうと思った時でした。
何をテーマにして良いかわからない、そのため、テーマを探して、
アジア・アフリカを放浪しました。
その旅の過程で、中東と出会いました。

人々の心が温かいのは、一つにはイスラムという宗教がしっかり生活に根付いているからだと思い、イスラムに興味を持ち、そのために、旅を途中でやめて、
エジプトのカイロでアラビア語の勉強をすることにしました。
そして、日本で伝えられているイメージとは違う、本当の人々の姿を伝えていこうと決心しました

そして、2003年にエジプトの砂漠で暮らす遊牧民女性のサイーダさんと出会い、
これまで毎年のように通って取材してきました。
彼女は女性一人で、ラクダ7頭を連れて砂漠で暮らしています。
泉の水を飲み、夜は月明かりでパンを焼く・・私はもともと、アウトドアには興味のない人間でしたが、そのような砂漠の暮らしは、とてもワクワクするものでした。

一番驚いたのは、イスラム教徒女性のイメージを覆してくれたことです。
イスラムの女性というと、ベールを被ってじっと家の中に閉じこもっているというイメージがあると思うのですが、
実際にはそんなことは全くない、生き生きと生きている人がたくさんいるということを実感しました。

彼女とのつきあいは、かれこれ10年近くになりますが、その過程で、
私の興味の軸がはっきりし、今後の方向性が見えてきました。
つまり、「イスラムの女性」「地球上から消えゆく暮らし」です。

これからしばらくは、この2つをテーマの主軸に、取材をしていきたいと思います。

その際の方法は、できるかぎり、ともに暮らしながら取材するというのが、
私のモットーです。
なぜなら、そうすることで、深く相手を知ることができ、
ともに暮らして相手が心を許したからこそ見せる笑や、聞ける話があると思うからです。

大変簡単ではございますが、受賞のスピーチと替えさせていただきたいと思います。
今日は本当にありがとうございました。

2012年4月10日 (火)

婚約まで顔を見ないー現代パキスタンお見合い事情

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。

今日はパキスタンの結婚について、ご紹介します。

パキスタンでは、都市部でもお見合いが恋愛を上回っています。
お見合いから結婚に至る過程は、こんな感じで進みます。

(仮に夫Iさんと、妻Aさんとしておきます)

Iさんの母親が、結婚斡旋をしている女性に、「だれか、良い娘さん紹介して」
という事からスタート。
そこで、3~4人の女性を紹介され、彼女の家にいったものの、学歴や家柄の点で気に入った女性はいませんでした。

そして、最後に紹介されたのがAさん。

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Iさんのお母さんは、長女を連れてAさんの家に行きました
(Iさんは一緒ではありません)。

Aさんと会い、お母さんと、Aさんの教育レベルや両親の仕事、兄弟仕事などを話し合います。

結果、Iさんのお母さんは、Aさん家族をとても気に入り、自分の家に招待しました。

1週間後にAさんの両親がおじさんと供に、Aさんの家へ。
ここで重要なのは、このときAさんは一緒に行かないことなのです。

お見合いでは、始めに男女が顔を合わせるケースもあるのですが、いまだに(とくに古風な家庭では)婚約するまで、互いに顔を見ないケースが多々あります。

Aさんの両親は、Iさんに、仕事のこと、給料の額などを聞きました。

Aさん両親とおじさんは、家に帰って相手の家族の印象や、Iさんが自分たちの娘に合ってるか、家族同士の相性はどうか、娘をあの家にやれるのか、娘はそこでやっていけるのか・・・などを話し合いました。
この話し合いは、Aさん抜き。

そしてAさんは、Iさんについての調査を開始。彼のオフィスに行き、彼が確かにそこに働いていることを確認、職場の人に彼の人柄を聞いたり・・・。

その結果、Aさんの父親は満足。

この後、互いの家族が家を訪ねあう交流が2回ずつほど行われ、7回目くらいの会見の時に婚約。

このとき、はじめてIさんがAさんの家に来て、2人が顔を合わせました。

続きは、また後ほど・・・・。

2012年4月 2日 (月)

物事には、それに適した時期がある

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。

 

パキスタンでは、多くの働く女性にインタビューさせていただきました。
そのうち、最も印象に残った方がいます。

 

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イスラミックチェンバーオブコマースの事務総長長補佐であるアティヤ・ナワジシュ(54歳)さん。

 「イスラミック・・」は、イスラム諸国がつくった団体。
57カ国が加盟、各国間の経済協力や貿易の連携などが目的です。

アティヤさんは、カラチ大学で修士を終え、80年にできたばかりの組織に参加。

オフィスには25人が働いていて、うちたったひとりの女性です。

彼女の業務は、新たな市場や投資を見つけたり、女性のイスラム諸国の女性実業家の間でネットワークを構築するための作業

仕事の話を聞いた後、プライベートな質問をしました。
まずは結婚について。

何歳で結婚したのかたずねる私に、彼女が
「50歳」とさらりと、堂々と答える姿が印象的でした。

それまで仕事に集中したかったからというのが理由とのこと。
お相手は1歳年上で、お互い初婚。パキスタンでは、とてもレアなケースです。
もともと2人は30年くらいお知り合い。友人を通して知り合い、グループや友達同士で出かけたりしていたそう。

早い結婚が一般的なパキスタン。

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そうでなくとも、婚期をのがすなど、焦りはなかったのか? 

この続きは、またのちほど。

「それはなかったけれど・・・・

2012年3月14日 (水)

幸せをきめるものは? パキスタン

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。

パキスタンでは、湖にうかぶ船で暮らすご家族と一緒に過ごしました。
8畳くらいの船に家族10人が暮らしています。

(これについては、後ほど詳しく書きたいとおもいます)

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いっぽう、カラチでは、お手伝いさんが10人いる大きな家にもステイしました。

意外だったのは、両家ともすごく幸せそうだったことです。

人の幸せは、お金のあるなしや物質的なものは全く関係ないんだなと思いました。

一つ決めてがあるとしたら「家族」です。

船の家は、小さな船に家族が一緒に暮らしているので、いつも家族全員と顔を合わせる。プライバシーのないような空間ですが、いつも家族が目の入る場所にいるのは、それなりに心地よいものなんだなと感じました。

一方で、大きな家の方は、もちろん一人ひとり個室があるわけですが(バスルーム付の)

3度の食事は必ず家族で食べます。

パキスタンでは、家族が生活の中心。個室があっても、そこに閉じこもっているということは、ほとんどないのです。

ひとりぼっち、あるいは家族仲が悪ければ、お手伝いが10人の家でも、船の家でも、どちらも寂しいにちがいない。

そんな、ごく当たり前のことに気づいた旅でした

2012年3月12日 (月)

「イスラームと女性」

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。

今日は、イスラム、とくにイスラム女性について書かれた本をご紹介したいと思います。

まずは、「イスラームと女性」( 国書刊行会刊 )。

9人のイスラム教徒識者による、主にイスラム女性についてかかれた本です
前半は主に日本に暮らすイスラム教徒女性についての話、後半はもっと広範囲に、イスラム女性全般についてかかれています。

「イスラームにおける女性の位置づけ」の章では、「イスラムが決して女性を差別した宗教ではないことが述べられています。
 「イスラムが生まれたアラビア半島では、女性の地位が低かったが、イスラムが登場して、女性に多くの権利が認められた。・・・jyそえいという存在を宝物のようにタイ悦な存在とし・・・」
「アッラーが男性と女性という性別を創造なさったのは、人生を分担し、相互に補い合わせるため」
「予言者ムハンマドは、死ぬ直前に女性を大切に」と繰り返していた(p.144)」

また「クルアーン(コーラン)の中のムスリマ」の章では、男女の平等について
「「男性は女性の一段上にある」(コーラン4章34節)は、あくまで男性におわされた責任の重さを表すもの」」

イスラム女性が髪や顔を隠すことについて、よく議論されますが、この本にはその点について、詳しくかかれています。「ヴェール議論と現代日本」の章に

これについては、イスラムの法学派によっても、考え方が異なるとのこと。
法学派とは何? 簡単にいうと、イスラムの聖典「コーラン」に書かれた教えをどのように解釈するかによって、いくつかの派に分かれるということです。大きなもので4つあります。

たとえば、「女性は美しい場所を隠すように」という規定があります。
では、美しい場所とは、いったいどこなのでしょう?
髪?顔?

これについては、「髪を隠すべき」と、イスラム学派の中でも意見が一致している。
では、。顔はどうなのでしょう? 
コーランには、顔を隠すことは、どこにもかかれていません。

じゃ、顔を隠さなくてもよい、ではなく、顔を隠しても隠さなくてもよい、それぞれの信者の判断による、とするのです。

興味深いのは、この章で執筆者がこんなことを書いておられること。
「現代日本・・あまりに女性の露出傾向がはなはだしいということ。。。強姦や痴漢行為が戒められるのは当然としても、反面、女性のあまりに挑発的で
刺激的な傾向については、何も制約がないのだろうか」といっている。

「行き過ぎを節度よく戒めるのが文化水準の高さ」
という部分にも、しごく納得。。

日経新聞「達人のこだわり」にて紹介されました

みなさん、こんにちは。

常見藤代です。

少し前になりますが、日経新聞の「達人のこだわり」にて、
私の記事がしょうかいされました。

どうぞよろしくお願いいたします。

2012年3月11日 (日)

パキスタンのお宅拝見!ファルーキさん一家(5)イスラムの教えによりそって

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。

パキスタンのからちで、カリムさんのご家庭にホームステイさせていただいたのは、
ある方の紹介なのですが、

それでも家族は、ことあるごとに私に私のいったものです。
「フジヨがこの家にきたのは、アッラー(神)があなたを連れてきたからよ」
「神が私たちを引き合わせたのよ。ミラクル(奇跡)だわ」

カリムさんの父親のファルーキさんは、毎朝6時に近所のモスクへ行きます。

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またカリムさんご夫婦、ナイムさんご夫婦とも、朝5時半におきてファジル(夜明け)の礼拝。

ファルーキさんは、朝モスクの礼拝を終えると、しばしばモスク仲間を連れてきて、
さらにまたイスラム談義です。

どんなことを話しているのか・・・ちらっと小耳にはさんだかぎりでは、こんな感じです。

「いつも神は私たちをみている。だから食事をしているときも何をしているときも神のことが思い出される」
「現世はたかだか100年の生に。来世が本当の生」
「神がこの世のすべてのことを支配している」

先に家の中で女性の力が強いと書きましたが、
ナイムさんの妻アフシャンさんは、それをこんなふうに説明します。

「イスラムではもっとも大切な役割を女性に与えているのよ。
コーランでは母親の足の下にパラダイスがあると書いてあるの」

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「私たちは、みんな死んだ後、最後の審判で、母親の名前で呼ばれるの」

これが本当に宗教的根拠があるのか、私はまだ確かめていませんが
こんなふうに信じられる女性は、なんだかとても幸せなんだろうなと思います。

(→庭で女性達が集まって、コーランの詠唱会)

2012年3月10日 (土)

旅の文化研究奨励賞を受賞しました

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。 

  

今年度の「旅の文化研究奨励賞」というものをいただきました。
大変ありがとうございました!

http://www.tabinobunka.com/gigyo/gigyo.htm

2012年3月 9日 (金)

パキスタンのお宅拝見!ファルーキさんのおうち(3)強いのは女

みなさん、こんにちは。
常見藤代です。

パキスタンのファルーキさん宅でのホームステイの続き、です。

家の中でパワーを持つのは女性です。

_mg_8996パキスタンでは、現在経済的な事情から、たくさんの女性が働いています。

ですが、カリムさんの奥さんシャヒーンさん、ナイムさんの奥さんアフシャンさんとも
外で仕事を持っていません。

といっても、2人とも大学でマスターを取得した高学歴の女性。
働いていないのは、ファルーキさんの
 「女性が働かないことで、それだけ男性がそのポストを得て仕事をして、家族を養うことができるから」
という考えによります。

それでも、2人とも「夫が稼いだお金でも、私たちのお金よ」

日本の家庭では、働いていない妻が肩身の狭い思いをするようなことが、たまにあるようですが、パキスタンでは皆無とはいえませんが、少ないようです。
(もちろん、すべての家庭を調査したわけではないので、あくまで私見です)

そもそもイスラムの教えでは、家計を担うのはあくまで男性。
女性は、たとえ働いていても、お金を家に入れる義務はありません。
私が会った多くの働くパキスタン女性も、食費や子どもの教育費などを払うのは夫だと言っていました。
彼女達は稼いだお金を貯めて車や家を買ったり(もちろん、これは家族共有です)

「男はお金を家に入れるだけ。家の中の事は女が決める」
とは、あるパキスタン男性の意見。
「働く女性が仕事を辞めたいと思っても誰も止められないけど、男の場合はとても難しいよ」と彼。

結婚した女性と夫の母親は、家の中で、一種のウィメンズクラブのようなものを作り上げて、とても強い絆で結ばれるのだとか。(写真はアフシャンさんと、彼女の息子の妻)

そして、先の息子や娘の結婚をはじめ、家庭内のことは、ほとんどこの「クラブ」内で決められていくのです。

«パキスタンのお宅拝見!ファルーキさん一家(2)年長者を尊重

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